2006年10月19日(木)
OPEC内の不満
[エネルギー]
OPECが日量120万バレルの減産
NYの夕方遅く、これから食事をしようかという時に
けっこうなサプライズのニュースが飛び込んできた。
サウジのヌアイミ石油相が午前中に減産に強い意欲を示していたことに加え、
減産量が市場で予想されていた100万バレルを上回ったこと、
日量2,800万バレルの生産枠からではなく、
2,750万バレルとされる現在の生産量から減産を行うことと、
事前のシナリオ の中でもほぼ満点に近い強気の内容と言えるだろう。
ナイジェリアのダウコル議長も12月総会での50万バレルの
追加減産の可能性を強く示唆する発言をしている。
彼らが性根を据えて減産を実行すれば
年内は60ドル台前半の水準を維持することも出来るだろう。
さて、OPECのサイト に行くとその内訳が出ている。
よく見ると、加盟国間で減産の幅にかなりのばらつきがあるのが分かる。
強行に減産を主張していたべネズエラは13.8万バレルと9月の
水準から5.4%の引き下げ。続いてイランとナイジェリアが4.5%、
インドネシアが4.4%、アルジェリアが4.3%と、中東以外の国の減産率が高い。
一方、減産の割合が4%を切るのはUAEとクウェート。
盟主であるサウジは4.2%と、ほぼ真ん中あたり。
ちなみにOPEC全体の減産量は、生産枠の4.3%にあたる。
傍目には中東諸国、特に親米色の強い国々が得をしているように見えるが・・・
減産、減産と強く主張していたベネズエラはともかく
イランやアフリカ諸国などは、結構不満がたまっているのではないだろうか。
いずれにせよ、加盟国間の割当比率を固定したままにしてきた現在の生産枠が、
実質的には機能していないことを改めて露呈する結果となったことは間違いない。
ナイジェリア、アルジェリア、リビアといった国々はここ数年大きく生産量を
増やしており、OPECに対し割当比率を引き上げるように主張してきた。
最近割当比率の変更問題は不思議と議題に上がらなかったが、
これは各国が目一杯生産してきたから、必要がなかっただけのこと。
今後は、改めてこの問題が持ち上がるだろう。
もう一つは、イラクの問題。
今回もイラクのシャハリスタニ石油相は豪州を訪問中で緊急総会に不参加。
訪問先では生産量が年末には日量300万バレル近く、
2012-14年には600万バレルに増えるとの見通しを示している。
もちろん生産枠を外れているため、今回の減産に加わらない。
今後はイランだけでなく、他の加盟国からも
イラクに対する不満が強まってくるだろう。
そして、イラクにはいまなおOPEC脱退という選択肢も残っている。
それでも現時点ではまだ需要が比較的堅調だから何とかなるが、
OPEC全体の生産余力が300万、400万バレルと膨れるような事態になれば、
こういった加盟国の不満が一気に噴出、カルテルの足並みが揃わなくなる
可能性は十分に高いと思われる。
まだ一年以上先の話なのかもしれないが
OPECをウォッチする時は、こうした背景も頭に入れておいたほうが良いだろう。
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