2008年3月7日(金)
OPECが臨時総会開催を見送った理由
[エネルギー]
第148回OPEC総会は生産量据え置きで合意
石油輸出国機構(OPEC)は5日、オーストリアのウィーンで第148回定例総会を開催、イラクを除く加盟12カ国の生産量を現行のまま据え置くことを決定した。
共同声明では米国の金融市場の落ち込みや信用不安を伴う景気減速について、世界景気の下ブレや原油需要の低迷につながるとの懸念を示した上で、在庫が過去5年の平均以上の水準にあるなど世界市場に対する供給は十分なだと指摘。現在の価格はファンダメンタルズを反映しておらず、ドルの下落やインフレに対する懸念、市場への大量の資金流入の影響を受けているとした。4-6月期には季節的に需要が低迷すると見られるが、市場の先行き不透明感やボラティリティーの高まりに配慮、市場の安定と十分な供給をもたらすという加盟国の目的を確認する意味からも生産量を据え置くとした。
また、ベネズエラと米エクソンモービルの法廷闘争についても取り上げ、同国が国際法に基づいて自国の天然資源に関する権利を主張するのを支援するとした上で、誠意ある、友好的な交渉によって問題が解決することを求めるとした。
総会にはエジプトとメキシコの石油相、オマーン、ロシア、スーダンの石油担当副大臣がオブザーバーとして出席。次回は9月9日にウィーンで定例総会を開催することで合意した。
臨時総会開催見送りは強気見通しの表れか
エネルギー価格の高騰に危機感を募らせる米国や国際エネルギー機関(IEA)などの消費国から増産圧力が強く掛かる中で開かれた総会は、大方の予想通り現状維持の決定を下して終了した。暖房需要期が終了するのに伴う季節的な需要減少に加え、米国の景気減速に伴う需要の伸び悩みが予想される中、今回は減産を求めるベネズエラやイランなど強硬派の主張の方に分があると思われ、議長であるアルジェリアのヘリル石油相も直前の発言ではかなり減産に傾いていたように思えたが、最終的には消費国との摩擦を避け、市場に余計な混乱を招かないためにも据え置きで合意に達したようだ。
生産据え置き自体はは事前に予想されていたこともあり、これ以上特に何も言うことはないが、気になったのは加盟国が9月の定例総会以前に臨時総会を開くことで合意しなかった点だ。4月にローマで開かれる国際エネルギーフォーラムでは加盟国閣僚が非公式に会合を持つと見られているが、正式には何一つ合意しなかった。昨年も3月の定例総会から9月の定例総会まで臨時総会を開くことはなかったが、その後は07年12月と08年2月に臨時総会を開いている。この差は一体何処から来るのだろう。
OPECが最も恐れているのは原油価格の急落だ。しかしながら、現時点ではそうした恐れは少なく、この先市場が彼らの望む方向(上向き)に動いていくとの見方をしているが故に、臨時総会について具体的な話が出なかったのではと考える。要するに、価格が下がる心配がないのなら、わざわざ会って話す必要もないという訳だ。また、暖房需要期には消費国からの圧力も強いが、春以降は季節的な需要減と言う大義名分もあるので、増産のポーズを取らなくても良いというのも大きいのではないか。
OPEC内の団結が今後の鍵を握る
OPECは昨年9月の定例総会で、サウジのゴリ押しにより日量50万バレルの増産を決定したが、皮肉にもその直後から原油相場は上昇、今日1バレル100ドルをつけるに至っている。OPECが市場における影響力を失ったとされる所以だ。OPECの生産余力は現時点でサウジに数百万バレル残っているだけとされている。しかもそのほとんどは硫黄分の多い重質油で、仮に増産を行っても市場で求められているガソリンに精製し易い軽質油の需給緩和につながることはない。しかも増産を行えば、ますます生産余力が減ることになる。そうなれば突発的な供給停止に対応できないと、市場の不安が返って高まってしまうというのが現状だ。
しかしながら、これは価格上昇局面でOPECがそれを抑制することが出来ないということを示しているに過ぎず、OPECの市場に対する影響力が全て失われてしまった訳では決してない。価格下落局面でOPECがしっかりと減産を行えば、相場が崩れるのを防ぐことが出来るのは間違いない。OPECの中でも強硬派ベネズエラなどからは、1バレル90ドルが新たな下値目安になるとの見方も出ている。
この先価格が急落するようなら、06年10月のドーハのように緊急総会を開き減産を決定することもあるだろう。その際問題になるのが、加盟国が一致団結して生産量を引き下げることが出来るかという点である。減産合意を無視した闇増産が横行し、OPEC内のまとまりが全くなかった90年代、原油価格は一時1バレル10ドルを割り込むかという水準まで落ち込んだ。これに懲りたOPECはその後メキシコなど非OPEC諸国を巻き込んで徹底した減産を行い、相場回復に結びつけた経緯がある。彼らもそうした轍は二度と踏みたくないと思っており、加盟国同士の関係には特に気を使っている。今回ベネズエラとエクソンモービルの法廷闘争に関して、声明でベネズエラ支援を打ち出したのも、OPECの団結をしっかりとアピールする目的もあったのではないだろうか。
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