2007年2月19日(月)
大きな変化を捉える
[穀物・大豆]
14日に米農務省(USDA)から向こう10年の需給を予測する「ベースライン・アウトルック」が発表された。需給バランスなど、豊作や凶作が2年も続けばガラリと変わってしまため、10年先の予想などほとんど重視していないのだが、今年は少し目に付くところがあったので取り上げてみたい。
レポートよると、コーンの期末在庫は2005/06年度に19億7,100万ブッシェルあったのが06/07年には9億3,500万ブッシェルに激減、07/08年度には更に6億6,000万ブッシェルに減るとしている。需給逼迫の目安となる在庫率(期末在庫を需要で割ったもの)はそれぞれ17.5%、7.9%、5.3%となる。コーンの適正在庫率は大体15%から20%の間と言われているから、足元でいかに需給が逼迫しているか、数字を見るだけで明らかだ。(これはあくまでも長期アウトルックにおける数字、9日に発表された需給報告における06/07年度の在庫率は6.39%となっている) コーン価格が1ブッシェル4ドルを突破、96年以来の高値水準にあるのも当然だろう。
その上、USDA2016/07年度までの10年間の在庫率が常に5%前後の水準に低迷すると予想している。一番低くなるのが09/10年度の4.5%、その後徐々に上昇するものの、16/17年度でも5.7%までしか回復しない。在庫率が5%というのは、消費の18.25日分しか在庫がないということだ。流通が発達し、経済のグローバル化が進んだ今日では、一昔前ほど食糧の備蓄を気にする必要がなくなっているのかもしれないが、それにしても心もとない数字ではないか。
これは一体何を意味するのだろう。価格はこのまま上昇を続けるのか。商品の世界では、価格が上昇すれば必ず需要が抑えられ、生産が増える。今年度もより多くの農家がコーンを作付けすると見られているが、米国の生産だけでは追いつかず値上がりが続けば、世界中の農家がコーン生産を始めるだろう。普通はこのようにして価格上昇は止まる。
では、価格が以前のように2ドル前後まで下がるのかといえば、そうとも思えない。在庫率が15%や20%だった時代と、5%台が当たり前の時代では、状況がまったく違う。エタノール生産という新たな需要が生じたことで、これまでとは違う、新たな市場が出現したと考えるべきではないか。もちろん、昔の常識など全く通用しなくなるだろう。在庫率が5%に下がったからといって、パニック的な上昇も見られなくなるかもしれない。この先どの程度まで値上がりするかは見当もつかないが、適正とされる価格水準も今までよりかなり高くなるはずだ。小麦の価格はコーンより高いというのが常識だったが、今後価格差が逆転することも十分にあり得るのではないか。
一つの市場を取り巻く環境が大きく変わる時というのは、こういうものだろう。かつて1バレル20ドル前後が普通だった原油価格は、中国をはじめとした途上国の急速な工業化による需要の急増などが原因で急上昇、ここ4、5年の間に3倍以上になった。当時は全く想像もつかないことだったが、今では60ドルというのが一つの目安になりつつある。その間、原油が割高だ、割高だと主張していた人がどれだけ多くいたことか。昔の常識では恐らく正しい分析だったのだろうが、彼らは大きな変化を見逃してしまったのだ。
コーン市場の変化は、まだ始まったばかり。再び落ち着きを取り戻すまでに、やはり4、5年は掛かるだろう。相場で大きな利益を得るためには、こうした根本的な変化を上手く捉え、それに乗り続けることが重要だ。過去の常識に捉われることなく、この大きな波に乗り続けたいものだ。
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