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2007年3月31日(土)

コーンの作付増はどの程度弱気なのか
 [穀物・大豆]

米農務省(USDA)は30日に発表した作付意向調査で、コーン作付を前年比15.48%増の9,045.4万エーカーと推定した。1944年以来の高水準という予想以上に弱気の結果を受け、シカゴ市場は取引開始から20セントのストップ安をつける売り一色の展開となった。今回の作付意向の結果はコーン市場にとってどの程度弱気なのだろうか。

予想外の大幅増

まずは今回の発表のインパクトを改めて検証してみよう。USDAが3月初めのアウトルック・フォーラムで発表した07/08年度の需給推定では、コーン作付は8,700万エーカーとなっていた。期末在庫は6億3,700万ブッシェル、在庫を需要で割った在庫率は5.17%と前年の6.39%から更に下がると見られていた。

ところが、今回はそれよりも300万エーカー以上多い数字が出てきたわけで、これは相当なサプライズと考えるべきだろう。イールドその他、作付以外の数字に変更が無いとの前提で計算してみると、今回の数字そのままが作付けされた場合コーン生産は126億7,800万ブッシェル、期末在庫は11億2,000万ブッシェルにそれぞれ増加、在庫率は9.08%に上昇する。在庫率は依然として10%を切る低水準だが、5%前半になると見られていたのからは大きな修正となる。少なくとも、これだけの在庫が確保されるならば4ドル以上の価格で積極的に買い進まれることも無いはずだ。

コーン07/08年度需給推定と過去の需給

07/08年 (前回推定) 06/07年 05/06年 04/05年
作付面積 90.5 87.0 78.3 81.8 80.9
収穫面積 83.0 79.8 70.6 75.1 73.6
>イールド 152.8 152.8 149.1 148.0 160.4
期初在庫 752 752 1967 2114 958
>生産 12678 12195 10535 11114 11807
>輸入 15 15 10 9 11
総供給量 13445 12962 12512 13237 12776
>>飼料および残余 5800 5800 5975 6141 6162
>>食用、種子、工業需要 4600 4600 3535 2981 2686
>>>エタノール 3200 3200 2150 1603 1323
>国内消費 10400 10400 9510 9122 8848
>輸出 1925 1925 2250 2147 1814
総消費量 12325 12325 11760 11270 10662
期末在庫 1120 637 752 1967 2114
在庫率 9.08% 5.17% 6.39% 17.45% 19.83%

他の作物からの転作

次に、今回のコーン作付増の背景を考えてみよう。今更説明する必要も無いとは思うが、コーン価格の上昇を受けて農家が大豆その他の作物からコーンへの転作を進めたことが大きな原因となっている。

下の表にあるよう、コーンの作付が前年から1,213万エーカー増えるのに対し、大豆は838万エーカー、春小麦は109万エーカー、綿花は309万エーカー作付が減っている。これらの作物からの転作が進んだのは明らかだ。生産州別に見ると、主要生産州のイリノイやアイオワでは大豆から、北部のノースダコタやサウスダコタでは春小麦から、そして南部のテキサスやミシシッピ、ノースカロライナでは綿花からの転作が進んでいることが分かる。

コーン主要生産州における作付の増減

コーン 冬小麦 小計 大豆 春小麦 綿花 小計 全体の増減
全米 ↑ 12.13 ↑ 3.93 ↑ 16.06 ↓ 8.38 ↓ 1.09 ↓ 3.09 ↓ 12.57 ↑ 28.62
イリノイ ↑ 1.60 ↑ 0.04 ↑ 1.64 ↓ 1.40 - - ↓ 1.40 ↑ 3.04
アイオワ ↑ 1.30 - ↑ 1.30 ↓ 0.95 - - ↓ 0.95 ↑ 2.25
ノースダコタ ↑ 0.91 - ↑ 0.91 ↓ 0.80 ↓ 0.50 - ↓ 1.30 ↑ 2.21
ネブラスカ ↑ 0.90 ↑ 0.15 ↑ 1.05 ↓ 0.65 - - ↓ 0.65 ↑ 1.70
インディアナ ↑ 0.70 ↓ 0.02 ↑ 0.68 ↓ 0.70 ↑ 0.02 - ↓ 0.68 ↑ 1.36
ミズーリ ↑ 0.70 ↑ 0.05 ↑ 0.75 ↓ 0.55 - - ↓ 0.55 ↑ 1.30
ミシシッピ ↑ 0.61 →0.00 ↑ 0.61 ↓ 0.12 - ↓ 0.49 ↓ 0.61 ↑ 1.22
ミネソタ ↑ 0.60 - ↑ 0.60 ↓ 0.65 ↓ 0.05 - ↓ 0.70 ↑ 1.30
オハイオ ↑ 0.50 ↓ 0.12 ↑ 0.38 ↓ 0.25 - - ↓ 0.25 ↑ 0.63
サウスダコタ ↑ 0.40 ↑ 0.45 ↑ 0.85 ↓ 0.35 ↓ 0.25 - ↓ 0.60 ↑ 1.45
カンザス ↑ 0.35 ↑ 0.50 ↑ 0.85 ↓ 0.75 - ↓ 0.05 ↓ 0.80 ↑ 1.65
ウィスコンシン ↑ 0.35 - ↑ 0.35 ↓ 0.25 →0.00 - ↓ 0.25 ↑ 0.60
ミシガン ↑ 0.30 - ↑ 0.30 ↓ 0.25 - - ↓ 0.25 ↑ 0.55
ノースカロライナ ↑ 0.26 ↑ 0.05 ↑ 0.31 ↑ 0.03 - ↓ 0.30 ↓ 0.27 ↑ 0.58
コロラド ↑ 0.25 ↑ 0.10 ↑ 0.35 - →0.00 - →0.00 ↑ 0.35
テキサス ↑ 0.24 ↑ 0.45 ↑ 0.69 ↓ 0.13 - ↓ 0.70 ↓ 0.83 ↑ 1.52

休耕地も活用

もう一つの理由として、休耕地への新規作付が進んだことが挙げられよう。米国内の休耕地は多くが保全プログラム(Conservation Reserve Program)の管理下にあり、今年度作付が出来る面積は約300万エーカーに限られている。昨年秋の価格高騰で作付が増えた冬小麦とコーンを合わせた面積から、作付が減った大豆、春小麦、綿花を差し引くと、これらの主要作物全体で286.2万エーカー作付が増えている。CRPによる制限ぎりぎりまで、作付を増やしたということだろう。

実際の作付はこれから

今回の推定は、あくまでも農家に対する事前の聞き取り調査によるもので、実際の作付はこれから開始される。今回の結果を受けコーン価格が大幅に下がるようなら、コーン作付を取りやめて大豆などに戻っていく農家も出てくるだろう。またこの先悪天候が続いて農作業が滞れば、作付時期が早くその期間も短いコーンを作付けすることが出来ず、結果的に大豆を栽培せざるを得ないところも出て来るはずだ。少なくとも、実際の作付が今回の推定より更に増えることはないと考えられる。

イールドが全ての鍵を握る


では、07/08年度の需給は作付増で緩和されるのだろうか?この先どの程度作付が減るのかは、農家の意向次第だけに見当も付かない。そこで、現在の作付が維持されることを前提に分析を進めることにする。

そこで鍵を握るのは、単位面積あたりの収穫量(イールド)だ。作付がいくら増えようとも、最終的なイールド次第で需給バランスなどは簡単に変わってしまう。夏の受粉期における値動きの激しさを見ても分かるよう、相場への影響は作付状況の比ではない。

次の表は今回の作付推定とアウトルック・フォーラムにおける需要推定をもとに、イールドだけを色々と変えてみた場合の期末在庫並びに在庫率を示したものだ。アウトルック・フォーラムにおけるUSDAの推定イールドは1エーカー152.8ブッシェルで、在庫率は9.08%となる計算だ。もし04/05年度並みの160ブッシェルまでイールドが上昇すれば、在庫率は14%近くに達することになる。一方147ブッシェルまでイールドが下がれば、在庫率は5.18%とアウトルック・フォーラムでの推定にほぼ並び、作付意向のサプライズ分を相殺することになる。干ばつなどの被害で140ブッシェルまでイールドが下がれば在庫はほぼゼロになってしまうが、この場合は輸出が大きく減少すると予想され、このような事態にはならないだろう。

イールドに伴う在庫率の変化

イールド 152.8 160.0 150.0 147.0 140.0
生産 12678 13275 12445 12196 11616
>国内消費 10400 10400 10400 10400 10400
>輸出 1925 1925 1925 1925 1925
総消費量 12325 12325 12325 12325 12325
期末在庫 1120 1717 887 638 58
在庫率 9.08% 13.93% 7.20% 5.18% 0.47%
画像(320x182)・拡大画像(501x286)



作付増でイールドは低下

もっとも今年度のイールドは、たとえ天候に恵まれたとしても期待されるほど上昇しないと予想する。作付が大幅に増えたことで、次のような問題点が生じると思われるからだ。

・ 同じ農地にコーンを続けて作付けした場合のイールド低下
・ 綿花や春小麦など、本来ならコーンの生育にあまり適さない農地への作付
・ もともと土地があまり肥えていない休耕地への作付
・ イールドが高く病虫害への耐性が強いハイブリッド種子の不足

更に、今年は夏にかけてラ・ニーニャ現象の発生が予想されている。ラ・ニーニャの年は中西部などで夏季に高温、乾燥気候が続くことが多いとされており、作柄に深刻な被害が生じることが懸念される。

強気相場は継続

以上の条件を考慮すると、作付が大幅に増えようともイールド低下によって需給が更に逼迫する可能性は極めて高いと推測される。仮に天候に恵まれ豊作になった場合でも、夏の受粉期が終了するまでは不安の方が先に立ち、買いが集まることになるだろう。今回の作付意向発表で強気相場が終了したと考えるのは、少々気が早すぎるのではないか。


PDFファイル(30KB)

Analisys Planting2007-0331 (30KB)

PDF版レポートのダウンロード⇒

Posted by 松      コメント ( 3 )

コメント

管理人様、休日の早朝に拘わらず丁寧なコメント頂き有り難うございます。今後もよろしくお願いします。

corn man 2007年04月01日 [削除]

corn man さん

コーンの場合、作付が始まるのは地域によってまちまちで、南部では3月末あたりから作業が可能になるところもありますが、北に行けば行くほど遅くなります。主要生産地のイリノイ州などは、4月の下旬からですね。一方、終わるのは何処も大体同じで、通常5月の中旬から下旬までです。ちなみに、大豆はそれより2週間ほど遅くなります。

天候への不安はご指摘の通りだと思います。これはよほど天候に恵まれない限り、毎年必ず出て来ます。大雑把に言うと、4月末あたりまで作付期の天候問題で上昇⇒買い材料出尽くして6月中旬にかけて下落⇒7月後半あたりまで受粉期の天候問題で上昇⇒買い材料出尽しで下落。というサイクルでしょうか。結局は誰一人全体的な作柄状況を把握することが出来ないから、乱高下するんでしょうね。最終的な生産状況が見えてくるのは、8月中旬に行われるクロップツアーから後ですね。

2007年04月01日 [削除]

管理人 様   おたずね致します
このところの穀倉地帯に例年にない降雨で低温気味であり主要産地での大型機械による播種に障害になるのではと危惧しているところですが播種期間はどの程度あるものでしょう。ずれ込むと生育の障害になる熱波を浴びる事にもなるでしょう。熱波がなくて雨がちなら葉枯なども心配です。よろしくお願いします。

corn man 2007年04月01日 [削除]

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