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2006年11月12日(日)

12年ぶりの民主党勝利で何が変わるのか
 [政治・経済]

周知のように、先の中間選挙で民主党が12年ぶりに上下両院の過半数を獲得した。
このことで市場はどのような影響を受けるのだろう。様々な角度から検証し、
現実味が高いと思われるものから並べてみた。

最初に言っておきたいのだが、何も大統領が変わったわけではないので、現在の政策が一斉に大転換する訳ではない。ブッシュ大統領は今後、政権を不安定にしないためにも議会との協調を模索しながら、政策を調整していくものと思われる。市場への影響は少しずつ目に見えてくることになるだろう。ここで述べていることは、目先の取引というよりも、今後相場を分析する際に考え方の参考にしていただきたい。

行き詰るブッシュ外交

米国の大統領の権限は絶大だが、両院を民主党に握られた状態でスムーズな政権運営が出来るわけはない。閣僚の承認から政策に伴う予算にいたるまで、民主党はありとあらゆる手段を使ってブッシュ大統領の足を引っ張りに掛かるだろう。共和党が敗北した一番の要因がイラク政策に対する批判だっただけに、ブッシュ政権は特に外交面での方針変更を迫られることになりそうだ。

米国がこれまでのような強気の外交を行えなくなることで、一番喜んでいるのはイランや北朝鮮、ベネズエラといった米国と敵対関係にある国々だろう。米国の混乱に乗じてこれらの国々がより強硬な態度を取れば、地政学リスクが高まる可能性も出てきそうだ。金や債券、原油などに強気に働くことになるだろう。もちろん、柔軟路線に転換することで問題が解決に向かい易くなり、軍事的緊張が高まる可能性が下がるとのシナリオも十分にあり得るし、論調としてはこちらの方が一般的だろう。だが、この論調はブッシュ批判の裏返しでもあり、米国が柔軟路線に転じたら全てが上手くいくと考えるのは安易な発想に過ぎる。

最低賃金の引き上げ

民主党が勝ったことの影響が真っ先に出ると見られているのが、最低賃金の引き上げだ。来年一月から初の女性下院議長に選出される予定のペロシー院内総務は、就任早々に最低賃金を引き上げると息巻いていたし、ブッシュ大統領も早速引き上げを認める意向を示すコメントを出している。ウォルマートに代表されるような、賃金の低い従業員を多く雇っている企業にとっては、かなりの逆風になるだろう。

だが、最低賃金引き上げが労働コストを押し上げ、生産性の低下や賃金インフレを引き起こすと考えるのは行き過ぎだろう。正確な数字を持っているわけではないが、最低賃金で働く人の割合は、特に金額ベースではそれほど高くなく、企業の人件費を膨らませるとは考えにくい。収益に影響が出そうになれば、高給取りの査定を厳しくすることで解決を図るはすだ。

対中強硬論の復活

対中報復関税を武器に中国に対して人民元の切り上げを迫るシューマー・グラハム法案をぶち上げたチャールス・シューマー上院議員に代表されるよう、民主党内には対中強硬派が多い (共同提案者のリンゼー・グラハム上院議員は共和党)。先の法案は今年3月の採決直前に北京を訪問した提案者の二人が帰国後に法案提出延長を表明し腰砕けになったが、民主党が勝ったことで再び対中強硬論が盛り上がる可能性は高いだろう。当然ながら、人民元に連れて円に対する買い圧力が強まることになる。

財政赤字縮小

民主党が多数となったことで、今までのような大盤振る舞いの予算は一切議会で承認されなくなるだろう。また2002年度末に失効した財政規律のルール(Pay-as-you-go原則、新たな政策を実施するためにはまずその財源を確保するというもの)を、復活させようとする動きが出てくる可能性もある。現在の大幅減税を恒久化するというブッシュ政権の方針も頓挫する可能性が出てきた。いずれも株式市場にとっては悪材料、国債の発行が抑制されるという面で債券市場にはプラスとなりそうだ。かなり先(1年以上)の話となるが、財政健全化の兆しが見え始めたら、現在のドル売り材料の一つがなくなることになる。

エネルギー政策にも変化

ブッシュ大統領が進めてきたエネルギー政策関連の法案の多くにも修正が加えられる可能性が高くなった。共和党がエネルギー開発に重点を置いていたのに対し、民主党は環境保護を強く主張している。エタノールをはじめとしたバイオエネルギー、代替エネルギー開発を加速させる動きが出てくることになりそうだ。

コーンからエタノールを作る工場建設や運営に対しより多くの補助が行われれば、それだけエタノール原料としてのコーンの需要が増えることになる。コーンから作るエタノールで補えない部分は、ブラジルからの輸入に頼ることになり、ブラジルでは砂糖きびベースのエタノールへの需要が高まる。ブラジルでは現在、収穫された砂糖きびをエタノールと砂糖生産に振り分けているが、エタノールの需要が増えれば当然エタノール生産が増え、その分砂糖の生産は減ることになる。代替エネルギー開発の推進は、コーンと砂糖相場を更に押し上げる方向に働くだろう。

一方、原油市場への影響はどうだろう。クリントン政権下では価格引下げを目的とした戦略備蓄在庫の大幅積み増しを行ったこともあり、民主党の方がエネルギー価格の上昇に対して神経質だといえる。この先価格が上昇する局面があれば、ブッシュ政権に対しなりふり構わない価格引き下げ策を求めるかもしれない。

しかしながら、長期的には彼らの意に反して価格が上昇するシナリオが考えられる。現在米国内では価格高騰によって過去最高益を毎期のように更新する石油関連企業に対し、懲罰的な増税を行うべきとの議論が高まっている。当然ながら、民主党が多数を取ったことでこうした動きが加速することになるだろう。現在のような状況でもさえ油田開発や製油所建設に消極的な石油メジャーが、懲罰的な税金を課せられてまで開発を推進するとは思えない。また環境保護の立場から、アラスカの大規模油田開発に待ったが掛かる可能性も高い。もっともこうした影響は5年、7年経たないと表れないから、現時点であまり真剣に取り上げることもないだろう。

代替投資への資金シフト

これらのシナリオは全て想像の範囲であり、実際にどれが実現するのかは先になってみなければ分からない。だが、12年続いた共和党の議会支配が終わったという事実は相当大きな変化であり、この先市場が何も影響を受けないと考えるのも不自然だろう。しばらくは先行きが不透明な状況が続くことになり、そうした不透明感は株式市場に嫌われる材料となる。セクターによって見方もまちまち(ハイテクベンチャーにはプラス、医療業界はマイナスなど)なのだが、それも確実な見通しでは決してない。相場環境が不安定になると予想される局面では、多くのヘッジファンドマネージャーが株式市場への投資比率を下げ、ボラティリティーを求めて商品をはじめとした代替投資に資金を振り向ける行動に出る。

Posted by 松      コメント ( 1 )

コメント

何が変わるのか?変化が多すぎて予測不可能。しかし変化が多いと言うことは=長期循環の上昇波の前か途中でしょう。

2006年
現実→中間選挙の秋は米国株は安値をつけると思ったが意外にも史上最高値更新。

2007年弱気派と強気派
弱気→金利が低下する中で住宅市場の冷え込みが続けば、ハードランディングに転じることもあり得る。私が、景気後退が2006年ではなく2007年に起こると予測するのはこのためだ。ドル が向こう数年で3割余り下落する可能性もあるとの見方を示した。さらに、米 経済が再びリセッション(景気後退)に陥れば、株式相場は一段と下落する。他国通貨に対するドルの長期 的上昇について、「この傾向が転換したようだ」と指摘。為替市場のトレンドは 通常、数年間持続するものであり、ドルが3割強下落したとしても「前例のないことではない」(ジョージソロス談)

強気→米大統領選挙1年前、ダウは景気対策で過去60年間上昇傾向。最も強い影響を株式市場に与えているのはアメリカ大統領選挙。選挙がある限り、有権者の希望に沿うために経済活性に全力を注ぐことになる。この行動が株式市場に大きなインパクトを与えている。アメリカ連邦準備銀行(FRB)にマネーサプライのアップか、もしくは、政策金利の引下げを要求する。大統領の再選時には、FRB議長の再選も約束されるなどの話し合いが持たれるのだろう。米政府がFRBの政策方針を支持することで、FRBの意向が米政策に強く反映する。とにかく、米議会は金を使うことが大好きである。各議員が地元に戻ったとき、有権者にその存在をアピールする手段として、新法案を議会で通して、多額の予算を取ったことを主張している。大統領選挙を一年前に控えた誰もが再選されることを望んで、米経済の活性化をはかっている。この伝統的なパターンは、再選のために戦う政党の動きでもある。景気がよく金回りが良くなれば、一般大衆はそのときの政党を支持する傾向が強い。
(ラリー談)

2008年
大統領選

2009年 
大統領選の後、通常、米株は伸び悩む傾向にある。もちろん、必ず株価が下がるとは言えないが、徐々に現実を直視する投資家が増えて、一時的にコレクション入りすることが多いようだ。3月の初めから4月の初めにかけて、米株は下げる傾向がある。大統領選挙の翌年に限って言えば、この時期に買いに出るのが良さそうである。

やす 2006年11月15日 [削除]

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