2006年12月20日(水)
利上げはマネーの拡大を食い止めるに至っていない、ECB総裁
[要人発言]
ECBのトリシエ総裁は20日、欧州議会で景気見通しについての証言を行い、経済成長とインフレリスクについてこれまで通りの主張を繰り返した。
現在の景気については7-9月期のGDPが主に欧州圏内の需要により四半期ベースで0.5%の成長となった事を挙げ、今年前半のペースからはやや鈍化したものの、引き続き力強いペースで成長しているとした。また07年、08年共に潜在成長率前後での成長を続けていくとの見通しも述べている。経済成長を阻害するリスクとしては、石油価格の高騰、保護主義の台頭、国際収支の不均衡を指摘している。
物価については、11月の消費者物価(HICP)は年率で1.9%上昇と10月の1.6%から上振れしたことを指摘。10月の落ち込みは8月から続く原油価格の急落を反映してのもので、エネルギー価格の見通しが不透明な中、2007年度のインフレは再び加速する可能性が高く、2008年度を通して年2.00%前後で推移するとした。また間接税の引き上げもインフレにつながるという。好景気を背景に労働市場が上向く兆候が見られており、賃金の上昇圧力が現在の見通しを上回る可能性があると指摘している。
マネーと信用の伸びについては、10月のM3の伸び率は年8.5%とユーロ発足後最高水準にあることを例に、最近の利上げはある程度の影響しているものの、依然としてM3の構成内での資金移動に止まっており、M3自体の拡大を食い止めるには至っていないと、利上げが不十分である可能性を示唆した。マネーと信用の力強い伸びは中長期的な物価上昇リスクとなることから、今後も注意深く見守っていく必要があるとした。
今後の金融政策については、中長期的な価格安定を実現するため、堅実で時宜を得た運営をしていくと表明。生産性を引き上げるためもと拡大政策を取るべきとの指摘があることについては、金融政策は生産性や経済成長のトレンドを拡大させることは出来ず、緩和的な政策はインフレを加速させ経済を不安定にするだけだと反論。生産性の低下は経済成長を阻害するだけでなく、労働コストを押し上げ一時的にインフレを加速させるリスクもあるとした。
Posted by 松