2008年08月26日(火)
FOMC、物価よりも景気減速を懸念・議事録
[金融・経済]
米連邦準備理事会(FRB)が26日に発表した8月5日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録は、メンバーの間で向こう数ヶ月間の物価上昇よりも景気減速が進むのを懸念する空気が強まっていたことを明らかにした。2008年の経済活動はこのまま低調との見通しでほぼ一致し、全てのメンバーが景気の下振れリスクが残ることを認識したという。さらに、資金調達のコストや融資環境が厳しくなっていることを考慮して現行の政策金利はとりわけ低いわけでないと判断するに至ったことを記している。
FOMCが5日の会合後に発表した声明では、景気の下振れリスクが残るとの見解を保つとともに、6月の声明で取り入れたリスクがやや後退との文言を削除していた。本日の議事録は当局の慎重な景況感が戻ったことを裏付ける。議事録によると、FOMCは4-6月期の経済に景気刺激策や輸出需要の拡大などの貢献があったことを指しながら、最近の経済指標は目先の家計支出鈍化、輸出需要の後退の可能性を示唆しているとの見解に至った。この結果、今年は潜在的な成長率を下回ったままで終わるとの見通しが優勢だった。
また、金融セクターで改めて不安定な展開になっていることも取り上げられたようだ。具体的に住宅公社のファニーメイとフレディマックに関して、投資家の両社の体質に対する不安が議会で支援策が成立した後にやや収まったが、まだ残っているとの当局の見解だった。金融機関は融資基準をほぼ全面的に引き締めたことも挙がり、株価の下落や資金調達のコスト増加などとあわせて、FOMCメンバーの大勢は経済成長の足かせになることに気を揉んでいたという。
議事録ではこのほか、基本的には金融市場と住宅市場が景気減速の主因となりかねないことでメンバーは一致したようだが、一部にはFRBによる市場への流動性供給拡充で、リスクが若干小さくなったと見る向きもあったことがわかった。
当局は物価について見解がまとまらなかったといえそうだ。声明同様に、メンバーの多くは目先の物価安定化観測を維持し、しかし物価の上振れリスクが著しく高まっていると慎重だった。前向きな見方の背景には最近のエネルギーやほかの商品相場の上昇一服があった。それでも、将来の最終価格への転嫁がインフレを押し上げるかもしれないと慎重だ。
特に警戒を強めていたのはフィッシャー・ダラス連銀総裁である。このため8月の会合で唯一、利上げ実施を支持して金利据え置きに反対票を投じていた。総裁は6月の会合に続いて、不安定な金融市場や景気を認識し、また将来さらに弱含む可能性があることに同意した。しかし、物価上昇による景気への影響がそれ以上に大きくなり得るとの見方を示唆。企業の間で輸入物価やエネルギーコストの高騰を転嫁する方向に一段と傾いていると述べた。
しかし、ほとんどのメンバーはコア部分が2009年に安定化するのを見通していたと議事録にある。企業で価格対策を取り入れる傾向が強まており、顧客側にも抵抗が小さくなってきたとの報告もあったが、一人のメンバーは製造業者の中に需要への影響懸念から値上げに消極的なことを取り上げた。また、ほかのメンバーからも稼働率の低下もあって、インフレが落ち着くシナリオも挙がっていた。
将来の金融政策を巡って、メンバーは次の変更は引き締めとみていたと議事録が示している。しかし、政策変更のタイミングや度合いは経済や金融市場の展開次第であり、またインフレ見通しにもよると早期の利上げの可能性はこの会合で小さいとみなしていたことがうかがえる。
なお、議事録によると、FRBスタッフが会合用に作成した景気見通しの報告で2008年後半と2009年の米実質国内総生産(GDP)伸び率を下方修正していた。スタッフは労働市場における不振続きと金融市場の悪化、消費者や企業の景況感が悲観的な上、製造活動の縮小を理由にしており、潜在的な成長ペースを取り戻すのは来年後半との見通しだった。また、個人消費支出(PCE)物価コア指数は年初からのエネルギー高や輸入コストの増加を反映して今年後半にやや上向き、しかし、2009年に上昇が鈍るのを見越していた。
Posted by 直